亀の子束子をご愛用あるいは支えて頂いている皆さまのもとを訪れて、さまざまなお話を伺う「亀の子訪問記」。
今回は、国指定伝統的工芸品『別府竹細工』を作られている「オオハシバンブーワークス」の大橋さんにお話を伺いました。
どしゃ降りの雨が工房の屋根を打ち付ける中、初対面だと思えないほど親しみのある笑顔で別府竹細工について語って
くださったのは、15年前に独立し竹細工職人として活躍されている大橋重臣さん。
工房の中に入るとすぐ、材料となる竹が様々な長さ、幅に整えられ束になったものや、顔よりも大きな丸に組まれた作品が
飛び込んできました。
壁には職人に欠かせない道具が並んでおり、雰囲気だけでワクワクする場所でした。
早速、話が弾んだ勢いで籠を作る行程を見せて頂く事に。
一つの作品を作る為には、まずは材料作りが肝心。
この初めの作業で作品の仕上がりが左右されます。竹筒を持った時に、かたいのかどのくらいの強度があるのか、どの作品に
適しているのか、その竹の質を見極めて材料を仕分けしていきます。
まず、竹割用のナタで竹筒の節を削り(節くり)必要な幅になるまで竹を割っていきます。
大橋さんの手慣れた手つきに見とれていると、あっという間に作業が進んでいきました。
1日ひたすら材料作りをする日もある竹細工。
ナタで竹を割るときの独特の音がとても心地よく、大橋さんも
「材料作りは大変ですが、気持ちいいんですよ。竹を割る音や削る音が」
と言われていました。
籤(ひご)のかたさ、長さ、強さを分け束にしたところで一晩水に浸けます。
竹籤を編み込む際に割れないように、水分を含ませて柔らかくするために必要な作業です。
一晩漬けて水を含んだ竹籤を見せて頂くと、皮の色が濃くなりしなやかさが増していました。
それから幅を揃え、厚みを調整し、角を取る。竹籤を作る為に、私が数える限りここまで9つもの行程がありました。
竹細工は室町時代に、商用の籠を作って売っていたことが始まりとされています。
先人の知恵が今もなお受け継がれる伝統工芸の魅力が随所に見られ、きれいに整えられた竹籤が編まれ始めると、その美しさは
一層増していきます。
大橋さんの作品は、一般的に使われる竹籤よりも厚め。その分強固でしっかりとした仕上がりになります。
編むときのポイントは、底の部分を編み込む際の目の幅。
通常よりも厚みのある竹籤で編む為、編めば編むほど底の編み込みの際とても力が必要になります。
もともと物作りが好きな大橋さん。様々なものがある中でなぜ竹細工を選んだのか尋ねてみると
「竹細工を作っていると、楽しいことが多いんですよ。」
「1人で材料作りから最後までできるし、道具が少ない分どこでも作れ、たくさんの技法があって色んなことが試せます。」
「年齢に応じて作りたいものが変わってくるので、作品を見るとそのときどんな自分だったか思い出します。面白いですよ。」
「自分の作りたいものを、好きに材料からつくれます、ホテルとか仕事の依頼があったときはそうはいかないですけどね。」
ラスベガスのホテルからオブジェ制作の依頼があった際、なんと大きなたわしの照明を依頼されたそうです。
その図面には『Tawashi』と書いてあり、繊維の部分を竹で作る時に、たわしってどうやって作っているんだろうと興味を
持ってくださり、取材の中でたわしの作り方についても、盛り上がりました。
縁を編み上げ、形を整えると
「さて、お待たせしました!」と腰を上げ、大橋さんがニコニコと持ってきたのは亀の子束子。
「これね、竹細工を教えてる生徒に実演販売したら絶対売れる自信があるんです!」
と興奮気味に話しながら、亀の子束子で籠を磨き始めました。
「前に一度、亀の子束子と間違えて買ったたわしが全然ダメでゴミみたいな繊維が出るのと竹籤の隙間にたわしの繊維が入り
込んでたわしの毛が抜けちゃったんです。でもほら!見て!亀の子さんのは全然抜けないでしょ!?」
どちらが亀の子束子の社員かわからないほど熱弁して下さる大橋さんの亀の子束子への信頼が、本当に嬉しかったです。
「あと小さい作品は、普通サイズのたわしでは磨きにくいのでチビッコを使っています。これがまたいいんですよ!毛が短いせいか
強いでしょ!?竹はかたいからこのたわしの強さがないとダメなんです!」
「なんでかなあ、亀の子束子で磨くとマットな艶が出て触り心地も変わるんです。気のせいじゃないんですよ!」
そう言って、まだ仕上げをしていない作品を持ってきて仕上げ前と仕上げ後を見せて頂きました。
左が磨く前。右が磨いた後。
写真でも光沢が変わっているのがわかります。※フラッシュ無しです。
更に驚いたのは、手触り。磨く前ももちろんすべすべした竹肌で気持ち良いのですが、磨いた後の竹肌は明らかに手触りが変わり
何かニスでも塗ったのかと思うほどの変化。
例えば、綿から絹に変わるようなキメの細かさになったという感じでした。
「生徒は初めは嘘だろ~という顔で聞いていますが、いざ自分で磨いてみると驚いて、もういいと言うまで磨いています。」
「たわしはナタや他の道具と同じで、うちではなくてはならない道具です。それも亀の子さんでなきゃ。」
竹細工職人を続けていく中で大橋さんは「手間暇かかっている分、量産ができません。数で勝負はできないんです。」
「数が作れない分、他が作れないような1点にして価値を見出す事が必要かな。」
天然素材だからこその良さ、素材の仕入れの大変さ、今の時代に合うようにどう価値をつけるのか。
大橋さんの作品には、その人柄が表れるように柔らかい中にも、芯がありブレない強さを感じました。
お忙しい中、快くご対応頂き本当にありがとうございました!
『オオハシバンブーワークス』 紹介ページ
https://www.oita-shoku.jp/shoku.php?shoku=3&no=11
ホテルや店舗の照明・オブジェの依頼も受けられる大橋さんの作品。
▼お話の中に出てきた、たわしをイメージしたラスベガスのホテルの照明。
ラスベガス MGM Grand Hotel Fiamma Restaurant 「NEST」
interior design_YABU PUSELBERG
collaboration_SAWADA HIROTOSHI
photo_ERIC LAIGNEL
▼LuLu
https://www.luluweb.com/
大橋さんの作品をこちらでお買い求めいただけます。
登場した亀の子束子製品
亀の子束子1号
元祖「亀の子束子」。耐久性抜群で掻き出す・こすり取る洗浄が得意です。
パームチビッコP
一回り小さいチビッコは繊維が短く、水はねが少ないのが特徴です。